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第40号 平成19年8月1日 |
■目次■ |
・<玉林院玄関正面頭貫木鼻> |
玉林院玄関正面頭貫木鼻 |
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大きな本堂に導き入れるための玄関は、小柄ながら随所が彫刻によって飾られています。鎌倉時代に禅の教えとともに中国から伝えられた、禅宗様とよばれる建築様式に則った端正なつくりの中に、彫刻は彩りを添えています。頭貫木鼻とは、柱と柱の頭を繋ぐ横架材の装飾的な端部のことで、外郭線がうねるような曲線で構成され、その中に渦が線彫りされたものが一般的です。しかしこの渦は時代とともに派手やかな渦彫刻となるものもあらわれ、桃山時代ともなると花鳥を題材とした浮彫り彫刻を施すことも盛んとなりました。玉林院のこの木鼻彫刻もその流れにそったものといえましょう。
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修理事始 −始まった防災施設工事− |
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玉林院本堂修理事務所より[十五] |
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修理担当 能島 裕美 |
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春に前年度工事が終わってからのしばらくの間、修理事務所では今年度工事発注の事務手続きを行っています。今年度分の工事発注が進んでいる間、修復現場は工事の音のない静まりかえった日が続いています(写真1)。 |
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さて、今夏から本堂・玄関の修復にともなって、本堂・玄関そして南明庵及び茶室(蓑庵・霞床席)を火災から守るための防災設備(消火設備)を設置する事業が新たにはじまりました。今回ははじまった玉林院の防災施設の設置工事の内容についてお知らせしたいと思います。 |
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そこで万が一に備え、本堂・玄関の大きな屋根全体に水を噴射し消火・類焼防止をする消火設備を設置します。建物全体を目標にした消火設備には、外部から建物をねらって水を放射する放水銃(写真2)、屋根面に取付けたノズルから放射する水で建物を包むドレンチャー(写真3)の二種類が一般的です。玉林院本堂・玄関の場合、周囲には余地が少ない一方、庭木が多く、屋根自体が大きく高いため、機器の位置設定等に難行が予想される放水銃方式よりドレンチャー方式が有効と判断されました。本堂と廊下棟の屋根面に放水ノズル42機を設置することによって、玄関を含めた屋根全体をくまなく水で覆う計画です。そして、これまで個別の消火設備がなかった南明庵・茶室には放水銃1機が、建物内部での火災に対応するために本堂周辺に屋内消火栓4機が設置されます。これらの放水機器の他に、50分間の大量放水に十分な水量をあらかじめ貯めておく貯水槽、境内各所の放水機器まで水を送るためのポンプ、ポンプを格納するポンプ室、その他必要な配管や操作機器・電気設備の建設・設置を行うのが防災施設設置事業の全体像で、期間は平成19〜20年度を予定しています。今年度は本堂の屋根まわりと内部に設けるドレンチャー配管を行います。そして来年度、修復現場の素屋根や修理事務所のプレハブなど仮設物を撤去した後に、貯水槽・ポンプ室建設をはじめ、配管工事・電気工事などを行うことになります。なお、防災施設の事業は、設計監理を大森設計事務所、施工を(株)織部設備工業が担当されます。 |
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玉林院覚え書き |
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玉林院所蔵の絵画 − その一 | |||
東京芸術大学名誉教授 海老根 聰郎 |
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玉林院にある絵画といえば、狩野探幽一門によって描かれた本堂の襖絵がもっともよく知られている。しかし同院には、あまり世に聞こえてはいないが、その外、掛幅の、日本、韓国、中国の興味深い作品が保存されている。これから数回、この中からいくつかの作品を選んで紹介しようと考えている。 |
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この阿弥陀如来図は国の重要文化財に指定され、色々な美術書に取りあげられたり、大きな展覧会にも出品されていて、襖絵以外の玉林院の絵画の中でもっとも知られたものだろう。 |
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今までの意見と違ったもう一つは、従来この仏像は釈迦如来と考えられてきた。文化財指定の名称も、これまでの展覧会カタログ、美術書にもそのように記したものが多い。しかし最近の研究では、阿弥陀如来と考えられている。その仏像が誰を描いたものか決定するのは、印相(手の形)とか、持ち物によるが、この図の手の結び方は阿弥陀だと考えられているのである。ところで、高麗仏画は、現在百点以上の遺品が確認されているが、その大部分、特に質の高い作例が、この阿弥陀如来図のように日本の寺院に収蔵されている。これらはおそらく、古く十六、七世紀に日本に将来されたと推測されているが、収集の具体的事情などは明らかではない。 |
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玉林院の阿弥陀如来を見てみよう。宝玉や蓮華、つないだ小玉などで美々しく飾られた台座上に白い縁どりをもつ緑の衣を着し、その上に思い切った原色の赤の太衣を着し、阿弥陀はゆったりと坐している。そしてその衣服は、金泥の丸文、唐草文、その外多彩な彩色の文様で埋めつくされているのである。 |
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本堂修理委員会だより |
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事務局長 杉原 賢一 |
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編集後記 |
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◆韓国の慶州美術館長が、当院に伝わる釈迦如来像(韓国では、阿弥陀如来像)との対面の様子をNHKの特別番組でご覧になった方もいらっしゃることと思います。 |
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