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第37号 平成18年8月1日 |
■目次■ |
・<清風> 玉林院住職 森 幹盛 |
清風 |
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![]() 墨跡 先住 森宗秋 |
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今年も早半年が過ぎ猛暑の季節となりましたが皆様には如何お過ごしでしょうか。 |
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玉林院住職 森 幹盛 |
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修理事始 −檜皮葺(ひわだぶき)− |
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玉林院本堂修理事務所より[十二] |
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修理担当 能島 裕美 |
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今年は、晴れの猛烈に暑い日が続き本格的な夏到来かと思えば、また雨の日が続くといった具合で、いっこうに梅雨の明ける気配がありません。修復現場の素屋根の中も、スコールのような土砂降りの時には、修復半ばの建物まで降り込んでくる雨をよけるため急いでビニールシートを広げることもしばしばです。 |
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![]() (左)写真一:屋根下地まで完成(平成18年6月末撮影) (右)写真二:部材の隙間に落ち込んだ檜皮くず |
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現代建築で屋根といえば、一般的なのは瓦葺、金属板葺などでしょうか。この場合、屋根葺材は瓦、金属板など工業製品の材料ですが、日本では古来から木の板や皮、茅・葦・藁といった草の茎や葉など植物性材料が建物の屋根葺材料に使われてきました。中でも檜の剥いだ表皮を使う檜皮葺、椹などの木材を割って作った薄い板を使うこけら葺は他の国の建築ではあまり例のない、日本建築特有の屋根葺工法で、日本の伝統建築の特長である優しい柔らかな曲線の屋根は檜皮葺・こけら葺によってその特質が最も発揮されるといっても過言ではありません。気になる耐久性は建物周囲の環境や材料の質、葺き方の仕様などにより一概にはいえませんが、通常檜皮葺で三十年、こけら葺では二十年程度の葺替周期といわれています。なお桟瓦葺では五十年程度で葺替が必要といわれています。 |
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![]() 写真三:軒付の断面(平成18年6月末撮影) |
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![]() (左)写真四:施工中の軒付 檜皮を積んで竹釘で留める (右)写真五:完成した軒付(平成18年6月末撮影) |
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今年度とりかかることになる軒先以外の屋根面(平葺部)は軒付の上端から始まって、屋根下地の上におよそ7.5p程度の厚さに、皮を重ね並べ葺き上げます。こちらの葺地に使うのは長さ二尺五寸(約75p)、幅五寸(15p)、厚さ五厘(約1.5o)にこしらえた皮です。この皮を四分(約1.2p)づつずらして重ね竹釘でとめていくことによって連続した平滑な屋根面をつくっていきます。二尺五寸の皮を四分ずつずらして重ねていくわけですから、平葺部分は断面にすると六十二枚の皮が重なって出来ていることになります。 |
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玉林院■逍遙■──(六) |
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お寺の味−大徳寺納豆 | |||
取材・文 安藤 寿和子 |
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ひと粒の中に鄙と雅が混じり合う、大徳寺納豆。 |
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平成17年8月5日 [粉まぶし〜室入れ]
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![]() 豆を大桶へ移して、まぜて、取り分けて。 |
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境内のセミの声も一段とヒートアップする炎暑の朝、大徳寺納豆作りがスタート。まずは、前日に茹でてザルにあげておいた大豆を大きな桶へ。桶の中にはあらかじめ、はったい粉(麦粉)とタネ麹を入れておきます。豆を入れるやいなや、大きくかきまぜ、粉をまぶしてゆくご住職。手早く、やさしく、豆ひと粒ひと粒に、はったい粉と麹の衣を着せてゆくような作業です。 |
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![]() 炎暑の中淡々と進む作業に、納豆作りもまた作務のひとつであることを教えられます。 |
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豆がサラサラ、コロコロとしてくると、それを「麹蓋」と呼ばれる浅い木箱へ。この麹蓋、かなり長い間使い込まれているようで、あちこちに修繕の跡がいっぱい。よく見ると、穴の継ぎ当てに書き損じの水塔婆などが使われていたりして、代々のご住職の質実なご様子が偲ばれます。このあたりから、奥さまも参加。阿吽の呼吸で、十五kgほどの豆が見る見る、十五、六個の麹蓋に取り分けられました。 |
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平成17年8月9日 [室出し〜塩水仕込み]
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![]() 豆の入った麹蓋を積み重ね、ムシロをかけて3〜4日。 |
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立秋を迎えた、とはいうものの、やはりジリジリと暑いお盆前。墓参の人々もちらほらと訪れはじめる中、いよいよ「室出し」。豆は四日前のサラサラ状態とはずいぶん様子が変わり、一面に菌の傘を被っています。 |
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![]() 発酵が進み過ぎそうな時には、麹蓋を井ゲタに積み替え、風通しを高めます。 |
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8月9日〜約20日間 [熟成]
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![]() 豆は菌とともに、煮沸した塩水を張った大桶へ。 |
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塩水に仕込んでからの約二十日間は、大徳寺納豆作りの工程のうちでも、もっとも手間のかかる段階。ただ天日に晒して乾燥させるのでなく、熟成の環境を整える、というのが難所です。日に何度もまぜるのはもちろん、気候に応じて、桶に蓋をしたり、ムシロをかけたり、乾燥しすぎるようなら塩水を足したり―。 |
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![]() 味噌のような風合いになったところへ、さらに塩水を足してドロドロに。 |
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8月末〜約1ヶ月 [天日干し]
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![]() 3つの桶に分け、天日のもとで熟成。 |
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豆をまぜる手応えも、いよいよ重くなり、半乾きの状態になれば、納豆を桶から取り出し、最後の仕上げの天日干しにかかります。風と天日の力を借りて、豆ひと粒ひと粒に、ギュッと風味を閉じ込める期間です。ここまでの手間入りなればこそ、甘く辛く酸っぱく渋く、小さな豆粒の中に驚くほどの味わいを隠し持つ、禅の寺の納豆となるのでしょう。桶の底に残った豆のかけらや粉も、味噌にしたり、柚子に詰めて柚餅子にしたりと、すべてをありがたく使いきります。 |
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本堂修理委員会だより |
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事務局長 杉原 賢一 |
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編集後記 |
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◆三十五号〈冬号〉の編集後記を覚えていらっしゃいますか?大徳寺納豆の取材をして頂いたので『次号』(?)をお楽しみに!と、書いてあったことを・・・薄ら寒い中での春号の編集。どうも、季節はずれの感あり。と、今号に変更いたしました。記事がないとお叱りを受けましたが(?)に免じてお許しください。 |
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