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第32号 平成17年1月1日 |
■目次■ |
・<謹賀新年> 玉林院住職 森 幹盛 |
謹賀新年 |
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![]() 絵 木代 喜司 |
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昨年一年間、あらためて日誌を繰ってみるとずいぶん前のことと思っていたことがまだそれほど日時が経っていなかったり、その反対に最近のことと記憶していたことが一年以上前のことであったりと、日時の遠近感が曖昧になったように思います。これは毎日忙しさに追われているためでしょうか、それとも老化現象のひとつでしょうか。 |
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玉林院住職 森 幹盛 |
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特集−レポート− |
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大徳寺保育園創立50周年 記念式典
─新しい時代に向けて、いのち輝く子らとともに─ |
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平成16年12月11・12日 |
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簡素にして浄らか ぬくもりと慈愛に満ちた式典 |
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![]() 名残の紅葉に冬の陽光が降り注ぐ美しい日。園長先生でもあるご住職に導かれ入場した園児の、献燈献華により式典は始まりました。正面には母子観音絵図と、ご先住森宗秋師の遺影。法輪の刺繍の入った式典用ガウンを身につけた園児たちは、小さな手に手に、蓮華をかたどったろうそく、菊の花束を捧げ持ち、一歩ずつ中央台の前へと進みます。その緊張の面持ちの、なんと真摯で清らかなこと。燈華を手向け、ご住職夫妻に並んでごく自然に手を合わせる子供たちの姿に、古刹の懐に抱かれ、仏さまとともにある保育園ならではの、日々の教えがうかがえます。 |
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![]() 焼香のあと、薫香たなびく中で誦される般若心経、消災咒、本尊回向文。ご住職の声に来賓の大徳寺の和尚様方の声が和し、式場の空気はいよいよ厳かに。年長児による仏教歌「四弘誓願」に続いて園長挨拶。そして来賓お二方のご挨拶。50周年の感謝を述べられる園長に、京都市福祉局子育て支援部 今井豊嗣様からは「子供をめぐる殺伐たる事件の絶えない昨今こそ、50年の経験、ノウハウを生かした保育を」とのエール。また大徳寺本山宗務総長 神波東獄師は、ご先住に可愛がられたご自身の小僧時代の思い出話を交えつつ「賛否両論ある中で、早くから子育ての大切さを認識し、保育園創立を決行されたご先住の英断は画期的なもの。今後ますます、すぐれた人材の育成を」との祝辞。いずれのご挨拶も簡潔な中に温かな心の籠もる印象的なものでした。 |
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美しい「音」「香り」「想い」を捧げる清々しくおおらかな奉納会 |
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![]() 引き続き行われた奉納会のオープニングは園児たちの元気な合唱。『ありがとうおしゃかさま』では「世界平和の教えは、地球の仲間の宝もの」と三拍子のリズムに乗せて平和への願いを。『大徳寺保育園のうた』では「ダ・イ・ト・ク・ジ!ダ・イ・ト・ク・ジ!」と歌う園児達の誇らしげな表情に、深い愛情に包まれる中での、のびやかな園生活が見えるよう。 |
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![]() そして迎える奉納会のクライマックスは、ヴァサンタマラ舞踊団、シャクティさんのインド舞踊。演目は釈迦の十大弟子の一人であり、実子でもあるラゴラの修行から悟りを得るまでを題材にした創作舞踊『ラゴラ』、そしてヒンズー寺院に生涯を捧げた踊り手が、伝承発展させてきたという『マニプリ クチプディ』。大地を踏み鳴らす足拍子、響き渡る足輪の鈴。からだ全体で命の鼓動を刻み、信仰の歓びを表現するエネルギッシュな踊り。舞台も照明もないことをものともせず、魂に訴えかける音と肉体の表現に、舞踊が本来、神仏に捧げるものであったことを痛感。最後は踊りながらの散華で、美しい音と香り、想いに彩られた奉納会は幕を閉じたのです。 |
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心和む茶席、一字納経、そして「本堂修復」現場見学 |
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奉納会が終わると、列席の人々はいくつかの班に分かれて、茶席や納経、修復現場へ。多くの参列者がスムーズに各所を回れる人数や時間の配分には、保育園の先生方はじめ茶席、現場など各スタッフの相当の打ち合わせ、配慮があったことと思われます。 |
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![]() 写経、納経も、般若心経の276文字を、一文字ずつ木札に写し、納めるというアイディアのあるもの。老いも若きも、一人ひとりが心経の一字を書した木札は、祈念の後、大屋根の天井裏に納経。次回修復の折には、祈念の証が次代の人々に伝わる「修復を想う心」のリレーです。 |
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![]() 2日にわたり行われた記念行事には、来賓の方だけでなく、在・卒園児やその父兄、檀信徒の方々が多く参加。その準備には園児たちも大活躍しました。記念の日をみんなでお祝いするため、0歳から6歳までの在園児たちが、今までに園を巣立った千人以上のお兄さん、お姉さんの顔を、粘土や可愛い工作などで製作。そうして寺院山内や園庭の野点席、修復工事現場を彩った、喜びあふれる顔・顔・顔…。千の笑顔が迎える境内に集い、ともに記念の日を祝う人々のなごやかな光景こそが、開かれた寺院の確かな歩みを物語ります。 私事で恐縮ですが、私もある保育園に子供を預けて働く母の一人です。男女雇用機会均等などが謳われても、まだまだ無理解も多く、時には切なくなることも。けれど、保育園に迎えに行き、たっぷり浴びたお日さまの匂いや、絵の具のあとなど、存分に遊んだ証を髪や手にいっぱい付けて飛びついてくる子供を抱き締める時、今日も一日、この子を育んで下さった大きな愛のあることに、どれだけ支えられ、勇気づけられることか。安心して子供を預けられる保育園、先生方の存在意義の大きさを身をもって知る者として、大徳寺保育園の尊い活動に敬意を表すとともに、今後一層のご発展を心よりお祈りし、式典のご報告を終えさせていただきます。 |
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修理事始 −小屋組の復原− |
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玉林院本堂修理事務所より[九] |
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修理担当 能島 裕美 |
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夏から秋にかけて記録的な数の台風に見舞われた今年、普段は雨風から建物内部を守るはずの屋根が解体された本堂と玄関はなんとも頼りなげで、仮説の素屋根に覆われてはいるものの被害をうけては大変と気をもみましたが、なんとか無事に秋を乗り切り、まもなく修理も二年目が終わろうとしています。 さて、今回も前号から引き続き本堂・玄関の小屋組の復原についてご報告します。屋根葺材が檜皮(ひわだ)に復原されることは前回お知らせしたところです。屋根表面を覆う材料が変更されていたことから、屋根の高さや内部構造についてもなんらかの改変が行われている可能性が高いと推測されました。なぜなら当初の檜皮葺(ひわだぶき)の構造そのままで修理前のような桟瓦葺(さんがわらぶき)の屋根にするということは施工上不可能だったからです。檜皮葺と瓦葺では屋根の軒先の構造に大きな違いがあります(図1)。 |
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![]() 図1:檜皮葺、桟瓦葺屋根の軒先構造(断面図) |
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檜皮葺では軒先に厚く檜皮を葺き重ねて造る「軒付(のきづけ)」が必要です。一方、瓦葺の場合は軒付は通常ありません。よって檜皮葺を桟瓦葺に改めようとする場合、軒付の厚さの分だけ高くつくられている屋根面を低くすることがよくあります。 |
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さて、修理現場では建立当初のかたちに小屋組を再び組み上げるため、切断され短くなっていた小屋束一本一本の長さを測り、復原する長さにあわせて新しい材料を継ぎ足す地道な作業が続けられています。長さを復原し、経年変化によって捻れたり縮んだりした部材にもう一度正確な寸法で組み合わせることが出来るよう調整を行った小屋束は、もと立っていた場所へ立て直されます。その作業も中盤を迎え、ついに先日、屋根の頂点にあたる棟(むね)を支える棟束が調整を終えて立て戻される日を迎えました。小屋組が取り外されて少しがらんとしていた素屋根(覆屋)の中に、再び材料が組み合わさって小屋組の部材が少しずつ建ち並び、出来上がっていく様は本当にわくわくする、嬉しい光景です。 |
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編集後記 |
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◆玉林院本堂の修復工事は順調に進んでおりますが、資金的には深刻な問題を抱えての新春のスタートになります。写経や寺の茶室を使っての茶事を行ってはとのご意見もいただいております。その他にアイデアがあればご教示ください。又、一人でも多くの方に平成の大修復の理解と協力をお願い下されば幸いでございます。 |
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